川久保 益男
スペイン1ヶ月の旅
今回のスペインは予想以上にヘビーで中身の濃いモノでした。軽いカルチャーショックどころではなく、打ちのめされたことも何回か。普通の旅行者に飽きたらず、不遜にも地元民に溶け込もうなんていう大それた事でぶつかって行ったので、その反動も半端じゃありませんでした。日本に帰って1ヶ月は放心状態,その後次第に元の自分に戻りこの旅行記をまとめました。

スペイン1ヶ月の旅
 昨年の12月に25人の会員他をエスコートしてスペインに行きましたが、私の不手際と不慣れのため参加された皆さんには大変ご迷惑をお掛けしました。その雪辱戦と言うわけでもないのですが、今回は私を含めて4名という少人数。タクシー1台に収まる人数です。4人の人間は車内に収まるが、4個のトランク+αの荷物は1台のタクシーに収まるのか?空港のタクシー乗り場のオトッツァンにその事を言うと、「トランク4個乗せられる車!」と大声で客待ちのタクシーの列に呼びかけ、手を挙げた1台に無事乗り込みました。スペインのタクシーは日本の様なLPG車ではなくディーゼルなのでトランクは空いておりおまけに、そのチェコ製の車(シュコダ)のトランクは巨大で、我らの4個のトランクを飲み込み無事今回の旅は始まりました。 取り敢えずの行き先は前から行ってみたいとねらっていた「カディス」。泊まる所も何をするかも全て未定という気楽な旅です。全ての行動計画が予め決まっている方が「気楽」と考える人もおいででしょうが、私の場合はその逆で、どこで何が起こるか分からない、という漠然とした期待感の方が大きく、行ってしまえば、何とかなるさ! と気軽に出発しました。

(行程)
3月18日 成田発(スカンディナビア航空)〜マドリッド 2泊 3☆  カディス  14泊   HOSTAL(1泊20ユーロ)           この間エル・プエルト・デ・サンタマリア にフェリ−で日帰りタリファに 1泊    HOSTAL(ミニキッチン付) メリダ    3泊    HOTEL  4☆ カセレス      1泊   〃サラマンカ    3泊   〃アビラ        3泊   〃マドリッド    1泊  HOTEL  3☆              都市間の移動は全てバス。      4月15日 成田着
(バス代と所要時間)
 マドリッド〜カディス   8.5時間  \2,500
 カディス〜タリファ    2.0時間     \875
 カディス〜メリダ     4.5時間    \1,835
 メリダ〜カセレス    約1時間     \530
 カセレス〜サラマンカ  3.5時間  \1,450
 サラマンカ〜アビラ      1.5時間   \607
 アビラ〜マドリッド    2.0時間   \800

マドリッドからカディスに直行し、帰りも同じ道を帰ってこようかと最初は思っていたが、カディス在住(と言っても、半年は日本)の男性に話したところ、帰り道は「銀の路」を辿ってマドリッドに帰ったら、と言われてメリダ、カセレス、サラマンカに泊まってみた。アビラはおまけ。で、その結果は大正解! どの町も個性的で美しく、しかも国内旅行並に安全だった。この「銀の路」どっちからどっちに銀を運んだのか知らないが、何で日本の旅行社がこれらの町に目を向けないのか不思議に思う。でもそのお陰で安全なのだろうが。自分でバスに乗ることが出来、ホテルに泊まれればお勧めコースだ。メリダからアビラ迄に泊まったホテルは全部4☆のツインだったが、朝食無しで1泊50ユーロ前後。これらのホテルはカディスの旅行社(英語可)で予約し、バスは前日までにホテルのフロントで出発時間を調べて貰い、切符は当日購入した。

同行者:
 「単独行動が出来る人」という条件にもかかわらず参加された人は3人。往きの飛行機とカディスでの2,3日はほぼ一緒に行動していたが「ポルトガルに行ってファドを聞きたい」と3人揃って出かけ、3,4日して帰ってきた。その内の2人は翌朝私がまだ寝ているうちに宿を発ち、どこかに出かけてしまった。残る一人も1,2日カディスにいたがその後「銀の路」を辿るコースでマドリッドに向かって出発して行った。スペイン語は挨拶が出来る程度なのに、実に勇気のある人達だった。

それぞれの町の印象:

マドリッド:
 いわゆる大都会で、雑然としていて、中心部は治安が悪く、名所旧跡も一度行って見れば充分もし空港がなければ行きたくない所だ。プラド美術館の絵画を愛する人から見たら、かなり野蛮人って言われそう。今迄に2回行ったが、1、2時間が限界だった。

アランフェス:
 地元では「アランホエス」と発音する。マドリッドとの間は路線バスが頻繁に行き来している。「アランフェス交響曲」がお好きな方はこの町には行かない方が良いかも。比較的新しい宮殿内部は趣味も良いとは言えないし、あの曲の荘厳さにはとうてい及ばない。むしろグラナダのアルハンブラ宮殿の方がこの曲の雰囲気に合っている様に感じた。

カディス:
 周りを海に囲まれており、その海も砂浜・岩礁・砦・船の出入りが活発な港等々と実に変化に富んでいる。旧市街は昔からの細い道が縦横に走り商店やスーパーマーケットが多く市場も活気に溢れている。観光客だけでなく地元の人の生活する町でもある。フェニキア時代から続くヨーロッパ最古の町の風格充分。
「カテドラルと旧市街」(カディス)                   薄茶色の丸い屋根がカテドラル。市庁舎の隣の泊まっていたオスタルからは歩いて3分位。この海沿いの道は市民の散歩コースで、釣りをする人も多い。カモメや猫に餌をやりに来る人達もいた。 「カディスの路」                            典型的なカディスの路で、こういうのが町を縦横に走っている。どの路も雰囲気が似ているので、最初のうちはよく迷った。
「カディスの路と小さな広場」路の途中にちょっと広がった場所があり「**広場」等と名前が付いている。 「カディスの港」
 左の赤い船はコンテナ船、その向こうのは客船、その前に小さく見えるのもコンテナ船。こういう大きな船が5、6隻は楽に留まれる位の港が有り、1、2日で荷物を積み込むと出航して行く。客船も大体1泊で居なくなることが多かった。コンテナの積み込み作業は見物で、台車に乗ったコンテナを引っ張ったり押したりして次々と船に入れる作業や、フェリーから降りた客のすぐそばで急旋回したり蹴散らさんばかりの派手な運転でお客さん達が悲鳴を上げて飛び退いたりするのを見ていると時間を忘れた。
「公園と散歩道」(カディス)
 島の周囲にはこの様な公園が幾つもある。ワインとスーパーで買った食べ物を持参し、時々海を眺めては昔読んだ「青べか物語」や「ダブ号の冒険」を時間を忘れて読み返した。野球帽とサングラスは必需品。
「海辺のBAR」(カディス)          浜に出っ張ったBARはカディスでもここだけ。歩き疲れた後の生ビールやよく冷えたワインは最高!何をしても「ちょっと息抜き、一休み」にはBARに飛び込む。赤い日傘の左側の道路の下にBARの本体は有る。ここで飲んで食べた後支払いに店の中に入ると、数人の男がバーの前に立って飲んでいたが、その中の一人がいきなり話しかけてきた。「日本じゃマグロが高いんだよなー、そうだろ」と。「この位の小さなのが一切れ、10ユーロもするヨ」と答えると「ナ! オレが言った通りだろ」と仲間を納得させていた。 「飼い主を待つ犬」(カディス)       カディスの人達は犬が好き、犬を連れて散歩する人も大勢。で、飼い主が一杯引っかけたくなるとBARに入る。でも犬は中に入れてもらえない。ご主人様の喉の渇きが収まるまで、こうやってご主人様を見つめて身じろぎもしない。15分でも20分でもこのままジーーと「オスワリ」している。日本のお嬢ちゃまお坊ちゃま達(ガキ共とも言う)に見せてやりたくなった。 「海沿いの道とBAR」(カディス)       こういったBARは至る所にあり、沈み行く真っ赤な夕日を正面に見ながらワインなんぞ飲むこそめでたけれ。もう天国の一部である。
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